この記事ではバイクや車の純正パーツで多く使用されているABS樹脂の修復方法について解説します。
ABS樹脂とは、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンという3つの主成分から成るプラスチックです。
これら3つの成分の頭文字をとってABS樹脂という名称で呼ばれています。
ABS樹脂は、強度や耐久性があり加工も容易なことからバイクや車のパーツとして多く使われています。
ABS樹脂でできたパーツは強度もあり弾性も兼ね備えている優秀な素材なのですが、ひとたび割れてしまうと修復するのがとても大変です。
強力な接着剤で修復したとしても、結局は同じところから割れてしまうのがオチ
なのでABS樹脂製のパーツが割れてしまった場合は、諦めてしまう方も多いのだと思います。
でも、諦めるのはまだ早いです。
この記事では、ABS樹脂製のパーツを修復する方法をお伝えしていきますので、ご自身で修復をお考えの方は参考にしてみて下さい。
ABS樹脂の補修に必要な材料
ABS樹脂パーツの補修には以下の3つの材料が必要です。

- アセトン
- ABS樹脂のチップ
- ステンレス製のメッシュ
アセトン

アセトンは身近なところではネイルの除光液に使われていたり、FRPの刷毛洗い用の溶剤にも使用されている有機溶剤です。
このアセトンがABS樹脂のパーツ補修では大活躍してくれます。
※アセトンは可燃性の液体です。取り扱いには十分に注意してください。
アセトンを入手する方法はホームセンターの他、Amazonや楽天でも入手することができます。
ただ、こちらの商品に関してはAmazonよりも楽天の方が商品のラインナップが豊富でしたので、楽天のリンクを貼っておきました。
よろしければご確認してください。
ABS樹脂のチップ

ABS樹脂のチップとは、ABS樹脂でできた部品を細かく裁断したものです。
廃棄するパーツなどを用意して細かく裁断するだけです。
廃棄するパーツは自動車修理工場などに行けば譲ってもらえると思います。
もしお近くに自動車修理工場がない場合には、身近にあるプラスチック製品を確認してみましょう。
プラスチック製の食器などはABS樹脂が使用されている場合があります。
ABS樹脂の見分け方は製品のどこかに記載されていますので確認してみて下さい。
下の写真は、ある車のフォグランプの部品です。ABSと表記されているのが分かります。

ステンレス製のメッシュ

ステンレス製のメッシュは、ホームセンターで購入できます。
茶こしに使われる目の細かい柔らかいメッシュは、今回の作業には不向きです。
ざるで使用されているメッシュが使い勝手が良いと思います。
少し勿体ないような気もしますが、100円ショップにあるキッチン用のざるをカットして素材として使用すると安上がりです。

補修用のABS樹脂を作る

①要らなくなったABS樹脂の製品を細かく裁断します。

要らなくなったABS製品をペンチや万能ばさみで細かく裁断します。
②裁断したABS樹脂を蓋の付いた瓶に入れて、アセトンを注ぎ入れます。
裁断したABS樹脂を瓶に入れたらABS樹脂が全部浸るくらいのアセトンを注ぎ入れます。

③蓋をして1日放置
蓋をした状態で1日放置します。
するとABSのチップが溶けてドロドロの液体が出来上がります。
これが補修用のABS樹脂です。

ここまでが補修用のABS樹脂の作り方です。
こうして完成した補修用ABS樹脂を使って割れたABS樹脂パーツを補修していきます。
補修のやり方

今回は割れたバイクのフロントフェンダーを補修します。
画像は割れてしまったABS樹脂製のフロントフェンダーです。
取付け部分が割れてしまっていて破片も無い状態です。
割れた部分に足付けをする

破断した断面とその周囲に足付けを行います。
#150のサンドペーパーを使ってしっかりと足付けします。
足付けをすることで、補修用の樹脂と製品がしっかりと密着するようになり、より強固な補修を行う事ができます。
欠損している部分は作る

欠損していて破片がない部分はプレート状のABS樹脂を切り欠いて作ります。

ステンレスメッシュを熱して補修する部分に埋め込む

ステンレスメッシュを熱してから補修する部分に押し付けると樹脂が溶けてステンレスメッシュが埋まっていきます。

ステンレスメッシュがしっかりと埋め込まれるまで、炙って、押し付けてを繰り返します。
この時、炙りすぎるとABS樹脂が溶けてしまいますので加減しながら作業します。
補修用のABS樹脂を塗り重ねる

補修用のABS樹脂を塗っていきます。
この補修用の樹脂は空気に触れるとすぐに固まってしまうので素早く作業します。
一度に厚く塗ってしまうと中に空気の層ができて強度が保てません。
面倒かもしれませんが、薄塗りをして乾燥させてを何回も繰り返して厚みを出していきます。

この後の工程では削って形成するので、少し厚みを持たせておきます。
サンドペーパーで削って形を整える
#180番のサンドペーパーを使って形を整えます。
次の塗装の工程で使うサフェーサー(下地)で削りキズを消す事ができます。
固定穴がある場合は一気に穴をあけない
ボルトの固定穴がある場合はドリルを使って穴をあけます。
穴をあける時は、一気に開けようとせずに少し小さめの穴をあけてから、ヤスリで削って形を整えます。
以上でABS樹脂の補修は終了です。
ここから先は、塗装の工程になります。
塗装を施すことでより美しい仕上がりになります。
塗装に関しては下記の記事をご確認ください。
まとめ

ここまでABS樹脂の補修のやり方についてお話させていただきました。
ABS樹脂の補修は少し手間がかかりますが、強度を保ってしっかりと補修することができます。しかも低コストです。
絶版車では入手困難なパーツも多くありますので有効な手段の一つになるかもしれません。
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