この記事では昭和レトロな原付バイクを現代に復活させた記録です。
復活させた原付バイクはヤフオクで購入したYAMAHAの【チャピィ】です。
サラリーマンが悪戦苦闘しながらこの【チャピィ】を復活させました。
バイクのレストアに興味があればぜひ見て行ってくださいね。
レストアのベース車両はフレームが命
レストアのベースとなる車体はどんなものでも良いという訳ではありません。
では何を重視してベースとなる車体を選べば良いかというと、それはフレームです。
フレームには車体ごとの固有の番号である車台番号が刻印されていて
すべての車両はこの車台番号をもとに登録や抹消の手続きを行います。ですのでフレームはバイクそのものともいえる重要な部品と言えます。
フレームを確認する2つのポイント
レストアベースを入手したら、最初にフレームの確認を行います。
確認するポイントは2つです。
車台番号が細工されている車体はナンバーを取得することができません。
そのような車体は盗難車や事件性のある車体である可能性が高くこのような車体ををベースにレストアをしても後にトラブルの原因になる場合があるので避けた方が良いでしょう。
また、フレームに歪みや変形があるとバイクは真っすぐに走ることができません。
当然曲がる時にも影響がありますので非常に危険です。
エンジンの確認
レストアベースになるような車体ではエンジンがかからないなんて事は当たり前のようにあります。
エンジンがかからない原因には大きく分けて以下の2パターンがあります。
まずはエンジンが生きているか死んでいるかを確認する
確認方法はセルスイッチを押すかキックレバーを下げてエンジンがクランキングするかを確認します。
クランキングというのはピストン運動のことです。
クランキングしない場合はエンジンが死んでいる可能性が高くエンジンの交換が必要です。
逆にクランキングする場合はエンジンは生きている可能性が高いと言えます。
エンジンが生きている可能性があればかからない原因を探りましょう。
分解作業
エンジンの状態を確認したら次は分解作業です。
分解作業では以下のポイントを意識して行うと良いでしょう。
・分解前に浸透潤滑剤をスプレーを差しておく
・組み立てることを前提に分解を進める
・パーツごとに分けて保管する
作業の前日に浸透潤滑剤をスプレーする
古い車体を分解する時はネジ類が固着していることが多いのであらかじめ浸透潤滑剤をスプレーしておきます。
できれば作業の前日にスプレーしておくことでより効果を発揮します。
ネジトラブルに見舞われてしまうとその復旧に無駄な時間と労力を割いてしまう事になります。
一手間を惜しまない事が大切です。
分解する前には写真に残す!
原付と言えども部品点数は500点以上になりますので、やみくもに分解作業を進めてしまうと組み立てる時にとても苦労することになります。
人間の記憶はあてにならないものです。分解前の状態を画像に残して組み立て作業の時に困らないようにしましょう
サービスマニュアルがあるとさらに便利です。
パーツごとに分けて保管すれば作業効率アップ
分解した部品はパーツごとに分けて管理しておくと効率よく作業が進められます。
レストア作業では大量のネジやボルトを外します。
これをゴチャ混ぜにしてしまうと組み立てる時にネジを探すところから行わなければなりません。
これでは時間ばかりかかってしまい正確性にもかけてしまいます。
組み立てる時に困らないようにあらかじめ分けて保管すると良いでしょう。
100均で入手できるステンレストレーなどがあると便利です。
パーツの復元
古いパーツは経年の汚れやサビで見た目にも機能的にも不具合が生じることが多くあります。
パーツの復元とはパーツの壊れている箇所を補修して可能な限り現役の頃の姿に近づけてあげる作業です。
決して楽な作業ではありませんが、これがレストアです。
パーツの洗浄
まずはすべての作業の基本となる洗浄から始めます。
エンジンやミッションそれに電装関係のパーツは水を嫌いますので、これらのパーツ以外の洗浄から行います。
地味で手間のかかる作業ではありますが仕上がりを左右する大切な工程です。
・ピンク石鹸
・金属部品洗浄剤(サンエスなど)
ピンク石鹸は頑固な油汚れもよく落とすことができて、しかも天然素材から作られているので人や環境に優しい石鹸です。
よく機械のメンテナンスをする方なら常備しておきたいアイテムです。
また、サンエスに代表される金属部品洗浄剤で作った洗浄液に一晩漬込むことで、面倒な洗浄作業を時短することができるのでおすすめです。
サビ落とし
パーツを洗浄すると泥や油の汚れは洗い流せますが、サビまでは落とすことができません。
サビを残したままだと塗装をしてもすぐに内部からサビが浮き上がってきてしまいますので塗装をする意味が無くなってしまいます。
ここの工程でしっかりとサビを除去することでキレイな仕上がりにすることができるので面倒ですが根気強くサビを落としましょう。
サビは材質とその状態に合った方法を選んで落とします。
・サンドペーパーやワイヤーブラシを使って手作業で落とす方法
・サンダーやグラインダー等の電動工具を使って落とす方法
・サンドブラストで落とす方法
・薬品を使って落とす方法
サンドペーパーやワイヤーブラシを使って手作業でサビを落とす
なんだかんだ言っても一番確実な方法。
ただし時間と労力を必要とします。
サンダーやグラインダー等の電動工具を使って落とす方法
機械の力で楽に、しかも短時間でサビを落とすことができる。
機械が入らないような細かい部分や奥まった場所には使えない。
サンドブラストで落とす方法
エアーの力でパーツの細かな部分までサビを落とすことが可能で非常に作業性がアップする。
使用するにはコンプレッサーが必要なのでコスト的にハードルが高い。
液体サビ落としを使って落とす方法
漬込むだけでサビを落とすことができるので非常に楽である。
製品の材質や浸漬時間によっては変色する場合があるほか、重度なサビには不向き。
樹脂部品の補修
古いバイクをレストアする場合はパーツが破損している事も珍しくありません。
古いパーツは入手が困難な場合も多く、その場合には破損しているパーツを補修して再利用することも選択肢の一つにする必要もあります。
補修の方法は部品の種類や素材によりさまざま考えられますが、一例として割れてしまったABS樹脂の補修の方法についての記事がありますので参考にしてください。
現存の部品を復元するのがレストアという考え方もありますが、あまりここにこだわり過ぎると完成が見えなくなってしまいます。
必要に応じて部品を交換する事も検討しましょう。
アルミパーツの表面仕上げ
バイクのパーツにはアルミが多く使用されています。
アルミは比較的柔らかい金属なので表面の処理は容易にできます。
金属部品の仕上げは人によって好みが分れる所でもあり、光沢の無い仕上げを好む方もいれば鏡面仕上げのように光沢を追求される方もいます。
好みに合わせて表面処理の方法を決めます。
アルミ本来の質感に仕上げる
アルミがサビると表面が白く粉を吹いたようになったり、斑状の黒いシミができたりします。
このようになったアルミを本来の質感に復元するには、一度表面のサビを落としてから防錆潤滑剤を使ってスチールウールで研磨するとアルミ本来の質感に仕上げることができます。
画像はサンドブラスターで表面の黒いシミを研磨したあとに防錆潤滑剤とスチールウールで仕上げた状態です。
アルミ本来の質感を取り戻せました。
鏡面仕上げにする
アルミのパーツは磨き込む事で鏡面のように仕上げることができます。
鏡面にするまでには少し手間がかかってしまいますが、見た目のアクセントになるのでおすすめです。
手作業でもできますが、ミニポリッシャーを使うと比較的短時間で鏡面に仕上げることができます。
下はアルミパーツを鏡面に仕上げる方法を書いた記事になります。
鏡面仕上げにをやってみたい方は参考にしてみて下さい。
塗装
塗装は外観を装飾するだけではなく車体をキズや腐食から守る役割も担っています。
車両に用いる塗装にはウレタン系塗装とラッカー系塗装がありそれぞれ特性が違います。
ウレタン系の塗装
ウレタン系の塗装は仕上がりが美しく、耐ガソリン性があるので車両の外装に適した塗装です。
実際にほとんどの車やバイクはウレタン塗装が使用されています。
一般的に主剤と硬化剤を混ぜることで塗膜を硬化させるので耐久力のある塗膜を形成することができます。
一方でコンプレッサーやスプレーガンなどの設備にコストがかかってしまうという一面があります。
スプレーガンを使ったウレタン塗装に関しては下の記事を参照して下さい。
ラッカー系の塗装
ラッカー系の塗装とは、ラッカーシンナーを溶剤にした塗料を使って行う塗装です。
身近なところでは缶スプレータイプの塗料を使って行う塗装があります。
安価なので手軽に塗装ができる便利なアイテムです。
ただしウレタン塗装にくらべると塗膜が弱くキズが付きやすいうえ、耐ガソリン性がないので給油時などに誤ってガソリンがかかってしまった場合には塗装が溶けて剥がれてしまう弱点があります。
組み付け
すべてのパーツの準備ができたら、それぞれのパーツをフレームに組み付けていきます。
基本的に組み上げる作業は分解した時と逆の順番で行なえば大丈夫です。
ダメージのあるネジは新しいものに交換して指定されたトルクで締め付けていきます。
ガスケットやOリングは交換が基本
あとでオイル漏れなどがあると二度手間になってしまい場所によっては、せっかく組み立てたパーツをまた取り外さなくてはいけなくなる事もあるのでガスケットやOリングは新しいものに交換しましょう。
グリスの塗布と各種オイルの充填
パーツの組付けでは分解時に洗い落としたグリスの塗布を忘れないように組み付けていきます。
アクスルシャフトやステムベアリングには耐水性のあるグリスを、
エンジンマウントボルトなど熱のかかる個所には耐熱性のあるグリスをを塗布します。
グリスの特徴は下記を参考にしてください。
グリスの種類 | 耐熱性 | 耐水性 | 耐圧性 | 主な特徴 |
リチウムグリス | 〇 | 〇 | 耐熱性、耐水性に優れ幅広く使用できるグリスです。 | |
ウレアグリス | 〇 | 〇 | 〇 | 耐熱性、耐水性、に加え耐圧性にも優れたオールマイティーなグリスです。 |
モリブデングリス | 〇 | 〇 | 特に耐熱性、耐圧性に優れエンジン周りやボルトのかじり防止に効果を発揮します。 | |
シリコングリス | 〇 | 〇 | ゴムやプラスチック製品にダメージを与えないグリスで耐寒性、耐熱性に優れる。 |
各種オイルの充填
ミッションオイル
ミッション内のギアを保護するための潤滑油です。充填を忘れないように注意しましょう。
オイルはYAMAHAの純正ギヤオイルを使用します。
規定量の650㎖を充填します。
フォークオイル
フォークオイルはフロントフォークの伸縮の衝撃を緩衝するためのクッションオイルです。
使用するオイルは、YAMAHAサスペンションオイルG10を使用します。
左96㏄、右120㏄を充填します。
エンジンオイル
エンジンオイルは2サイクル用のエンジンオイルを充填します。
予算の関係でYAMAHA純正を用意することができませんでしたのでHONDAの2ストエンジンオイルを使用します。
ガソリン
最後にガソリンを入れたらエンジンの始動準備は整います。
ガソリンを少し入れたら燃料ラインからのガソリン漏れを確認しましょう。
エンジンの始動
最後にエンジンがかかる事を確認します。
いちばん緊張する瞬間ですね。
あっさりとかかる事もありますが、キャブレターを分解清掃した場合などは一筋縄ではいかない場合もあります。
ここが最後のヤマ場になります。感動のゴールまであと少しです。
まとめ
レストアは根気がいる作業です。
なので完成するまでに気持ちが切れてしまいそうになることがあります。
そんな時は思い切って新しい工具を購入してみるのも良い方法です。
作業性がアップするのでモチベーションを保つことができますし、何より新し工具ってなんだかワクワクしますよね。
下にあげたのは今回のレストアで私がとっても便利だと感じたアイテムたちです。
レストアをお考えの方は是非ご検討ください。
・ネジすべりどめ液
・ヴェラのドライバー
・スイベルラチェットレンチ
・剥離剤【スケルトン】
・ミニポリッシャー
・サンドブラスター
コメント